|
それは誰もが夢見た夢。
信じて疑わなかったもの。 だが、夢とは儚く、簡単にも崩れ去る。 それは時として、同じく夢見た人の手によって壊される。 これはそんな夢の足跡。 ◆第13話 番外編 『人の夢』◆ 女神は滅んだ。 歪な咆哮を残して霧散し、それと共にアーカイアの幻糸も徐々に消えていっている。 シェリルはその喪失感を戦艦の甲板の上で感じながら、まだそこにいる自分の英雄を見た。 絶対奏甲に乗っている彼の顔は見えない。 だが、何となく目が合った気がした。 最後の時は、笑って・・・・・・。 彼が最後に見た顔が笑っているのなら、彼の記憶の中に残る自分はきっと笑顔でいられるだろう。 感傷に浸っていると、何処からか歌が聞こえてきた。 不思議な響きのこもった旋律が辺りに漂い始める。 薄れつつあった幻糸が再び収束し、白い空間の中に門が開かれた。 それは、別れの時が来た事を彼らに告げた。 ソラ、アヤメ、ツムグは奏甲から降り、門の前に立った。 シェリルもまた戦艦から降りて彼らと向き合った。 「・・・・・・・」 「ソラ、ここまで、ありがとう・・・・・・」 「いや、君こそ約束を守ってくれてありがとう。これで、僕は現世に帰れるんだね」 「そうね・・・・・」 「な~にしみったれちゃってんのよっ二人とも!! ソラちゃん? 現世に帰ったってソラちゃんにはまだまだ戦いが残っているのよ!? 忘れてない!?」 「た、戦い・・・・・?」 「受・験・戦・争!!!」 ツムグの一言にソラは、はたと『現実』へと引き戻された気がした。 「あぁーーーーっ!! そういえば受験!! あっちではもう試験終わっちゃっているのかな!?」 「ソラちゃんもしかしたら来年は浪人かもねー」 「そ、それは困る!!っていうか、俺たち今頃現世では行方不明扱い!?」 「さぁ? どうかしらね。現世とアーカイアでどういう風に時間が流れているかも解らないし。帰ってみないと解らないわね。 それに、ツムグ。私達だって、まずいわよ。私達、留年しているのかもしれないわよ?」 「えぇぇぇぇー!! そんなのヤダ!! アヤメちゃん! どうにかして!!」 「無理ね。国家権力に高々一学生が逆らえるわけないじゃない」 「うぅぅっ!! どーしよーっ!!」 「こればっかりはどうにもならないわねぇー」 ツムグとアヤメが現世に帰ってからどうするかと言う話で盛り上がっている間に、ソラは再びシェリルと向き直った。 「いや、でもホントまだまだ帰れるって気がしていないよ」 「そう? でも早く帰らなきゃね。ソラのご両親や友達が向こうで待っているのでしょう? 貴方の帰りを」 「うん、たぶんね」 照れたようにソラは笑った。 「シェリルは――」 「――私はアーカイアでやらなきゃいけないことが沢山あるから」 「そ、そっか。頑張れよ」 「うん。ソラもね」 二人は何となく俯く。 ――これから、私の歌は届かなくなってしまう だけど、それでも彼の戦いは遠く離れた場所で続いている―― 「私の歌が聞こえなくなっても、戦わなきゃ駄目よ?」 「わ、わかってるさ!! やるよ、ちゃんと!」 ――たとえ、幻糸が無くたって―― 「そろそろ、行ったほうがいいんじゃない?」 シェリルはアヤメたちにも声をかけた。 ――結ばれている『絆』は消えない―― 「そうね、行こう、ツムグ」 「う・・・・・ソラちゃん、先に行ってるからね」 「はいはい」 そういうと二人は門の中へと消えた。 ――だから―― 「じゃあね、ソラ――」 「――さよならだ」 ――私は歌い続ける―― 歩み行くソラの背中を見ながら、シェリルは語りかけた。 ――貴方の為に、貴方との日々を思い出しながら―― ソラが光に包まれる直前、少しだけ彼が振り向いた気がした。 私は、笑えていただろうか。 それから、少しだけ時は流れた。 英雄達が去り。アーカイアは多少の混乱はあったものの、新しい秩序の下少しずつ歩み始めた。シェリルはそんな中、母の下で補佐官として、また、次期『黄金の歌姫』(女神あ力は無いので単なる称号)候補として、忙しく毎日を過ごしていた。 そして、たまに城のベランダに出て、歌を口ずさみながら空を眺めるのが習慣になった。 ――時間・・・世界・・・・・・遠く、遠く隔てた彼方へと 幻奏戦記Ru/Li/Lu/Ra 『追想曲をあなたに。』 という、エンディングは全て私の脳内で生成されたものです。 つまり、これは真のエンディング(以下ED)ではありません。いやぁーココまで引っ張ってこういう落ちです。 まぁ『過去と未来を繋ぐ物語』を見れてれば、直ぐにわかるかw あっちでは明らかに英雄はアーカイアにステイしているもんねぇ。 なので、勿論これからちゃんと真のEDも別にしてUPします。 何でこんなEDが存在しているかと言うと、第12話の女神との戦闘が冬休み前に行われ、そのあと3週間くらい経ってから第13話が行われたのですよ。そりゃあこのっくらいの夢くらいみちゃいますって。 あーあの戦いの後は、ずっと最初っからフラグを立ててきた「英雄を現世に帰すラスト」へと収束していくんだな~とネ。 なので私の中の妄想EDと正規EDの二つがあるのです。 え、正規EDだけで十分だって? まぁいいじゃないっすか。だって第12話まではこの妄想EDの為に色々フラグを立ててきたんですから。その無駄になってしまった努力に報いを下さい。
by ama_no_iwato
| 2006-10-10 21:46
| 『追想曲をあなたに』
|
ファン申請 |
||