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◆舞台裏◆
それはある日のセッションが始まる前のこと。 まだ、メンバー全員が揃いきっていない時だった。 ソラ:GM!!! 提案があります。 GM:なんでしょう? ソラ:思い出が欲しい!!!! GM:はい? ソラ:ほら、だってルリルラだよ!?温泉に行って、ドキドキイベントがそろそろ必要なのではないでしょうか!? GM:そうですねぇ~・・・まぁ残りのシナリオ(え?考えていたの?)の感じからしても一息入れてもいいですよ。プレイヤーがやりたいというのならやっても構いません。 ソラ:よし!じゃあ今日は温泉で。 GM:わかりました。 そして、私は事後承諾になったのであった。(前回の話で演出したように) 因みにガイアさんの台詞は殆ど自作。 プレイの時には彼の行動しか殆ど述べられていなかったので。 私の中のイメージ的にはあんな感じ。ちょっと暑苦しいアメリカ人(偏見)。 ◆第7話 2 『湯煙の向こう側』◆ シェリルと同室にされてしまったソラ。 ガイアに部屋割りを変えてもらおうと頼みに行くが、あっさりと追い返されてしまった。 まさか、こんな筈じゃ・・・。 そう思ってももう遅い。最初に温泉に行きたいと言い出したのは自分だったし、シェリルを誘ったのも自分だ。 だが、まさか彼女と同室に成るなんて・・・・・・・。 てっきり男同士の部屋だとばかり思っていた。 ガイアさんは僕とゆっくり話がしたいと言っていたのではなかったのか? ゆっくり話といえば、夜中布団に入った後の雑談だろうと、まるで女子高生のような事を考えつつもソラはシェリルが待つ部屋へと入る。 部屋の中は暖かかった。 宿の中に入った時点で外に比べればだいぶと暖かかったが、部屋の中は上着はいらなさそうだった。 実際シェリルは、雪の中の移動だったため羽織っていた分厚いコートを既に脱いで座っていた。ちゃんとブーツを脱ぎ畳の上に正座ではないにしろ座っている彼女の様子は、異世界の人間とは思えない。 ソラもコートを脱ぎ、机の向かいに腰を下ろす。 「あ、その、ガイアさんに部屋割り変えてもらおうと頼んだんだけど・・・駄目だったよ」 ソラはうなだれて言ったが、シェリルに気にした風はなかった。 「? そう。ねぇソラ。一つ聞いていい?」 「何?」 「さっきから疑問なんだけど、どうして部屋割りを変える必要があるの?」 「え、だ、だって・・・僕らは、その、一応、男女だろう?」 「だから?」 どうしてこれで通じないのだろう? 鈍いのか!? それともとぼけているのか? はたまた何かのいたずら? まさかドッキリじゃあないだろう。 「男女が同室で寝るなんて、その・・・は、はしたないだろう!?」 ソラは自分の言った言葉に赤面する。 何だって自分がこんな事を言わなくてはいけないのだろう。 「何故? 今までだってツムグやアヤメたちと一緒に寝た事はあったでしょう?」 「え、い、いや、寝た事は確かにあったけど、いや、でもその“寝た”とは違うんだけど・・・・・・あぁぁ僕は何を言っているんだ!!! シェリル、気にしないでくれ!」 「うん」 あっさりですか? 納得しちゃうのかい。 「ツムグやアヤメたちのときは単に皆で一緒に寝ただけであって・・・」 「何が違うの?」 「いや、だからね・・・?」 言葉は通じているのだ、だがどうにも意味が通じていない。 少しは察してくれ・・・・・・!! 頼むから!! ◆舞台裏◆ ソラ:うぉぅっ!! どうやって説得しよう!? セガ:無理じゃないかな? だって男女の概念も殆ど無いはずだし。男女の事についての知識はさっぱり無いだろうね。 シェリル:ガンバレー。 ◆話戻って◆ 困った。 ひょっとしてアーカイアの人たちにはそういった意識はあまりないのか? それもそうか。 男がそもそも居ない人種なのだ。 シェリルが自分に出会う前に普通に暮らしてきたのならば彼女が男と知り合う機会などはほぼ0だったのだろう。 と言う事は、そういった事を教えなければいけないのだろうか? ・・・・・・いや、教えるって何を? そう例えば――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(検閲削除)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ・・・いや、違うだろ。 落ち着こう。混乱してるよ。 えーと、そうか。 小学生の保健の授業のような事か!! コホン。「えーっとだな、シェリル。そこにきちんと座って」 「?」 ソラの方をいぶかしみながらもシェリルはもそもそと姿勢を正す。 「いいか、男と女にはオシベとメシベがあってだな・・・」 本当にこんな説明でいいのか・・・? いや、だがこれ以上は僕には無理だ。そんな事女性に向けて話したら変人の仲間入りしてしまう気がする。 と、説明を始めかけた頃、来訪者がドアを叩く。 「えーっとだからヨロシクナイんだけど――って、誰?」 「私よ私ー」 オレオレ詐欺・・・じゃなくて。なんだ。ツムグか。 「アヤメちゃんと一緒にシェリル姉さまをお風呂に誘いに来たの。なぁに? 私の訪問はよろしくないとでも?」 「違うって!! 全力で歓迎します!」 もうそんなに時間がたっていたのか。説明が出来なかった・・・・・・・い、いや、助かった・・・!! 「――だそうだ。んじゃシェリル仕度して先にいきなよ。僕はガイアさんが迎えを待ってるから」 「分かった」 ・・・・・・・・・・・・二人きりであんな話・・・死ぬかと思った。 ツムグが来て助かったーー!! 一方、ツムグはと言うと。 ソラちゃんとシェリル姉さまを二人きりにしてたまるものですか。 さっさと姉さまを連れ出して少しでも二人を離していないと・・・!! ――と、嫉妬に燃えていた。 そんなツムグに付き合うアヤメは静観。完全に第三者を決め込んでいる。 ツムグたち3人はガイアの歌姫にも声をかけるが、後ではいるからと言って断られてしまう。なのでそのまま3人だけで温泉に入る事に。 湯殿は女湯と男湯と別れており、流石『男歓迎』を掲げていた店である。 中はそれなりに広い脱衣所となっていた。肝心の温泉は露天風呂となっており、まるで日本の温泉宿のようだった。 切り出された石により湯槽が作られ、ドーナツ状となった中には巨大な岩がアクセントとして置かれている。(『らんま1/2』でこういう温泉があった。←中国の呪泉境ではなく普通の温泉ね。) 周囲は竹垣モドキに覆われ、その手前をちょっとした庭園のように整えられた植栽が飾られている。見た目は申し分ない。 まさか、異世界にやってきて温泉に入られるとは思っていなかったツムグは大いに喜んだ。 お湯加減も丁度よく、長湯には持って来いだった。 一人部屋でガイアを待っていたソラ。 シェリルたちが去って、15分ほどした後ガイアが誘いに来た。 それじゃ行こうか、といって歩き出したのはいいものの途中でガイアは、 「Ahhh!! いっけねぇっ☆ 俺ってばうっかり忘れ物してきてしまったよ!!! 悪いんだがソラ君、先に入っててくれないか? すぐに戻るからさ♪」 「あ、はい。分かりました。ではまたあとで」 といって引き返し、ソラは一人で温泉へと向かった。 そこにはちゃんと男湯と女湯と漢字で書かれた暖簾が掛かっていた。 異世界に来てまでもこんなものを見るとは思わなかったな、とちょっと可笑しかった。 さくさく服を脱いで湯殿へと行く。 湯煙が立ち上がる湯船はかなり広く、向こう側までははっきりと見る事が出来そうになかった。 「うわぁ広いな~」 ・・・・・・独り言なんか言っても仕方ないな。 さっさと入ろう。一通り体を洗った後、湯船に浸かろうとそちらへと歩いていく。 その湯煙の中に、誰か立っている人影があるのに気付く。 あれ? 誰か先に入っているのか。こんなところに他にも英雄が来ているんだな。 ちょっと挨拶でもしてみようかな、と近づくソラ。 だが、男にしてはそのシルエットは細かった。 僕よりも小さい・・・・・・子供? しかも、一人じゃなくて三人いるな・・・。 近づいていくとだんだん会話が聞こえてくる。 「・・・ちゃん以外と・・・大きい~いつもは着やせしているのね。ちょっと悔しい・・・」 「そんな・・・ツムグだってちゃんとあるだろう」 「そんな事ないよーっシェリル姉さまだってっほらっ」 「・・・え、あ、いや、そんな気にするものじゃないだろう?」 ・・・・・・。 は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!? 何故彼女達がここにいる!!!! 此処は男湯だろう!? 確かに僕がくぐった暖簾は男湯だった!! だが、シェリル達が居る!? まさかシェリル達が見間違えたのか? とも思ったが、ツムグとアヤメが居るからにはそんな間違いは起さないだろう。 じゃあ一体何処でこんな間違いが!? ぐるぐると考えつつも、はっきりとしている事が唯一つあった。 このままここにいたらマズイ!!! 死活問題である。 ツムグはまだしも、シェリルは銃の名手、いや、今は銃を持っていないが後の事を考えると恐ろしい。 更にアヤメだ。彼女は武道の達人である。たとえ素手であったとしても僕くらい軽く張り倒してしまえるだろう。 何とか・・・・・・何とか気付かれないようにしなければ・・・・・・!! とりあえずこのまま立っているのはマズイ。 ザブンと湯船に浸かり彼女達が見えない方へ、岩陰へと移動した。 ふと何かに気付いたように後ろを振り向いてアヤメが言う。 「・・・いま、音がしなかった?」 「え?そうだった?シェリル姉さまは何か気付いた?」 「水音がしたような気がしたけど?」 「猿とかかもよw温泉に出るってよく聞くじゃない♪」 「ツムグ・・・此処はアーカイアだから・・・・・・。」 「じゃあ、覗きとか♪男湯があるって事は男性もここに来るんだもん。もしかしたらソラちゃんたち以外にもお客さんがいてそのお客さんが・・・キャー!!w」 「・・・一応何もいないか、見てくる」 タオルと桶を掴んだアヤメは岩陰へと歩いていく。 「あ、じゃあ私も!!ほら、シェリル姉さまもっ!」 シェリルはツムグに腕を引っ張られてずるずると連れて行かれる。アヤメが向かったのとは逆の方から岩陰へとザブザブ音を鳴らせて近づいていった。 そんなやり取りをしている中、先ほどからツムグとアヤメが行っている会話に、シェリルはついていけていなかった。 いったい何がいるって言うんだ? 男性客が他にいたからって、彼らが何をするというんだ? そもそも、どうして男と女で湯殿が違うのかもわからない。 先ほどのソラといい、現世人への理解は進んでいると思っていたが、ちっともそうではなかったのだな・・・。先が思いやられるようだ。 だが、理解しないわけには行かないだろう。 彼女らが言っているのが一体何なのか、私も理解しなければ。 ――私は、ソラの歌姫なのだから。 ソラは自分が窮地に立たされているとつくづく思い知らされていた。 何故こんな目にあわなければならないのだろう? 分けが分からなかったが、何とかこの状況を打破せねば。 先ほど湯船にもぐった音がアヤメに勘付かれてしまった。流石戦場を戦い抜いた英雄だけあり気配には敏感なようだ。 水音を立ててしまった自分が迂闊としか言い様が無いが、それほどまでに自分が動揺していたという事だろう。 まぁ、こんな状況で冷静でいられる方がどうかしている。 ザブザブと彼女らが近づいてくる方とは反対側へと、今度は静かに移動する。 音を立ててくれて助かる。これなら間合いを取り安・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ それは、まるで何かの悪夢のようだった。 後ろに人が立っていた。そう、アヤメが。 3人で音のほうからやってきているのだと思いきや、アヤメのみ逆方向にいたのだ。 体に巻きつけられたタオルの下からはすらりと長い足が出ていた。日頃はズボンを履いている為気付かなかったが、その足は筋肉は付いているが意外と細く均整が取れていた。 呆けてアヤメを見ていたソラ。ふと気付けばそのアヤメの表情は厳しい。 「ソラ・・・・・・お前、何をやっている」 静かな声だが、かえって怖い。 「あ・・・・・・・いや、これは、その・・・・・・・・・・・・・事故なんだよ!!!!!」 弁解しようと慌てて立ち上がった。 だが、それは逆効果だったようだ。 立ち上がった瞬間、確かにアヤメの眉がつり上がったのを見た。 そして更に悪い事に、水音が聞こえたのだろう、ツムグが駆け寄ってきてしまった。 「どうかしたの!? アヤメちゃああぅゎぁああああああ――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!」 声にならない悲鳴とはこのことだろう。 全く無防備に駆け寄ったツムグは・・・哀れだった。 僕になんか見られたくなかっただろうに。 良く分からない叫び声を上げ、勢い良く湯船にもぐり喚いている。 その横にはシェリルまでもいた。 だがシェリルは恥じるでも怒るでもなく、そんな彼女の様子をいぶかしむように眺め、首をかしげている。 日頃下ろしている髪を纏め上げ、湯でほてり薄っすらと朱に染まったその体は・・・・・・綺麗だった。頬が熱くなったのは気のせいではないだろう。 「う、ぁ、は、鼻血が・・・っ!!」 か、格好悪い。非常に。こんな状態を見られてしまうとは・・・。 そんなソラの様子にツムグの叫びはヒートアップしていく。 「ひっやぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!! 見ないでぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!! 見るなぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!」 ソラは鼻を押さえつつ懸命に誤解を解こうとする。 「ツムグ!! 違うんだよ!!!! 僕は別に覗こうとかそういうんじゃなくて、ただ温泉に入ろうとしただけなんだ」 「・・・女風呂に?」 冷ややかなアヤメの声がする。鼻を抑えながらでは説得力があまりにも無い。それに―― 「違う!!! 僕はちゃんと男風呂にっ!!!」 「そんなわけないでしょう。此処は女湯よ。だいたいっさっきから素っ裸でっ!! 少しは隠しなさいっ!!!!」 「うゎゎっ!! 見て平然としてんなよ!! もっと早く言ってくれ!!!!」 慌てて桶で隠すがこんな事ではアヤメの怒りは収まらないだろう。 それは俺だけじゃないだろう!? シェリルにも言ってくれ!!! と心の中で叫ぶ。 「なぁどうしてこんなにツムグは赤くなっているんだ?それにソラも・・・」 場違いな発言をシェリルがしている間に、目の前ではアヤメが凶器となる桶を振り上げていた。 「――言い訳はそれ以上は無用よっ!!!!!」 勢い良く向かってくる桶をスローモーションのように眺めつつ、ああこれでとにかく終わるんだな・・・、遠のく意識のなかでぼんやりと思ったのだった。 ふと気付くとやたらとソラの心の中の描写が冷静です。まぁ、いいか。いざって言うときほど人間脳みその回転は速く成るものだしね。(あれ? それでいいのか?)
by ama_no_iwato
| 2006-07-21 07:30
| 『追想曲をあなたに』
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